2011年04月10日

山王公園から美野島へ

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 今日も朝から天気がいい。週末が二日続きでこんな快晴というのは久し振りな気がする。たいてい一日は晴れるが、もう一日は曇か雨となることが多い。最後の花見の週末ということで、天が配慮してくれたのだろうか。

 さて、花見行脚の最後を締めくくるのにどこに行こうかと昨晩から思案していたのだが、市内の桜の名所ということで残っているのは「南公園」や「紅葉山公園」だろうか。足を伸ばすなら、共に二千本の桜を擁する「海の中道海浜公園」や「油山市民の森」があるが、車を持たない身としては、そこまで行くのが大変だ。

 いっそ、代表的な名所ではなく隠れた花見の穴場でも訪ねたらどうだろうかと思い付いたところで、以前知り合いから聞いた「山王公園」が頭に浮かんだ。場所は博多駅の東側になる。今まで行ったことのないエリアなのでちょうどいい。

 地図で場所を調べて、地下鉄に乗って出掛けた。本日のスタート地点は地下鉄空港線の博多駅、つまりJR博多駅である。そういえば、この前JR博多シティーを見に来たばかりだ。

 先日来た時には、駅の西側を中心にウロウロしたが、今度は逆の東側から散歩をスタートすることになる。駅ではこちらの出口を「筑紫口」と呼んでいる。西側である「博多口」は、如何にも福岡の玄関口といった立派な感じがするが、筑紫口は地味で、まるで裏口のようだ(笑)。

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 山王公園は、筑紫口から南東方向に1kmほど歩いたところにある。本当は、地下鉄でひと駅先の「東比恵駅」まで行った方が近いのだが、散歩の距離を稼ぐため、JR博多駅をスタート地点に選んだ。かといって、駅からの道中が素晴らしい眺めといったことはない。山王公園までずっと味気ないビル街で、しかも地味なオフィス・ビルや雑居ビルばかりが並んでいる。

 このエリアは、地元の人に訊いても、あまり注目されていない地域らしい。「昔は何もなかったところですよ」と皆さん仰るが、何もなかったといっても荒地だったわけではあるまい。じゃあどんな雰囲気の所だったんだと尋ねると、誰もが記憶にないという。人によっては「確か畑だったですよ」なんて言う人までいるが、本当だろうか。いずれにせよ、忘れられていた場所ということだろう。

 実際、駅の東側は車も人も少ない。日曜日ということもあるのだろうが、ガランとしていてゴーストタウンのような静けさだ。途中、百年橋通りという東西に流れる幹線を横切ったときだけ車がビュンビュン走っていたが、南に下りていく通りは静かなものである。

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 道路沿いの街路樹は若葉が出て鮮やかだ。車もめったに通らない道路の、これまた人もほとんど歩いていない歩道をのんびり歩く。なかなか気持ちのいい散歩である。

 百年橋通りを渡ったあと道幅は狭くなり、街並みもそれまでとは変わって来る。道に面した一戸建ても現れ、駐車場で至るところ歯抜けのようになっている。高いビルも見当たらず、鄙びた地方都市の静かな午後といった風情である。

 通りの裏側はどんな感じになってるかと思いちょっと脇道に入って覗いてみると、低層のマンションやアパート、一戸建てがあるほか、倉庫があったり、雑居ビルがあったり、はたまた町工場まであったりして、統一感なく雑然としている。地元の人が「何もない場所だった」というのも何となく分かるような気がする。要するに、街並みの芯になるものがない。これだと確かに記憶に残りにくいなぁと感じた。

 信号で何度か止まるが、車も人もいないので信号機の意味がない。休みの日なら点滅信号で充分だろう。ほどなくして山王公園に着いた。

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 実は、この公園のことを教えてくれた地元の人は「ここの花見はけっこう騒がしいですよ」なんて言っていたから、あまり良いイメージを持たずにやって来たのだが、なかなかどうして、設備の整った立派な公園だ。野球場があるうえ、ラバーシートが張られたジョギングコースも整備されている。トレーニング用の設備もあり、管理事務所も置かれているようだ。運動をする人にはなかなか良い公園だ。ただ、この季節はジョギングなど不可能だろうが・・・。

 桜は探さずとも至るところに植えられている。桜で有名なだけあって、桜の案内板まで設置されている。ソメイヨシノが中心だが他にも何種類かの桜が植えられているようだ。案内板を見ると外周園路のほか、「さくらの丘」と「芝生広場」にたくさんの桜が植えられているらしい。早速ジョギングコースに沿って桜を見に行く。

 まずはさくらの丘だが、桜以上に人がすごい(笑)。知人の言っていた「騒がしい花見」というのがよく分かった。至るところシートが広げられ、子供からお年寄りまで、様々な人が楽しげに歓談している。陽気がいいのでビールが酌み交わされ、隅の方ではバーベキューの煙まで上がっている。これぞ「日本の花見」(爆)といった感じだ。

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 さくらの丘から降りていったところが芝生広場だが、ここにもたくさんの人がシートを広げて賑やかに一杯やっている。遅れてやって来たグループが、飲み物や食べ物が入った大きな袋をぶら下げてあちこち見渡しているが、いい場所は既に満杯の状態だ。

 ここに来るまでに通って来た街並みの静けさと、この公園の賑わいとの間のギャップがすごい。東京の上野公園の花見のようにカラオケセットを持ち込んで歌っている人はいないが、わいわいと話す人の声でたいそう賑やかだ。西公園や舞鶴公園と同じく何軒か屋台が出ているが、公園内ということもあってそれほどたくさんの店はない。

 花の状態は、満開を過ぎて散り始めといった感じで、至るところで花びらがハラハラと舞っている。この花びらの舞う感じが桜のもう一つの見所で、如何にも日本の春という感じがする。中には葉が出始めている木もあり、来週のウィークディのうちに多くの花が散ってしまうだろう。かくしてこれが今年の桜の見納めのような気もする。

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 芝生広場の先にある外周園路にも桜が植えられて、桜のトンネルになっている。ここも木の下ではシートが敷かれ、わいわいがやがやと皆さん、楽しそうに飲み食いしている。いったいどれくらいの人がこの公園に集まっているのか知らないが、飲み物・食べ物持込みとすると車で来ているのだろう。公園に駐車場はないから、どこに車を停めているのやら、ちょっと不思議である。

 ちょうど公園のジョギングコースを一周した辺りで、ポツリと神社があるのを発見した。ここだけ人がいなくて静かな雰囲気だ。せっかくなので立ち寄ってみる。

 神社は「日吉神社」で、愛宕神社同様、全国にたくさん末社のある神社だ。ただ、入り口に掲げられている由来を読むと、創建年代は不明で古くからこの地にあったとか、筥崎宮、住吉神社とともに黒田藩の藩主が正月に詣でる三社の一つだったなどと書いてある。筥崎宮や住吉神社の風格を思い浮かべると、どうも釣り合わない。あまりに敷地が小さく地味なたたずまいで、藩主が参るような神社とは思えないのである。

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 案内板には他にも、この神社が駅の東側にある「比恵(ひえ)」の地名の由来になったとある。もしかしたらこの神社、只者ではないかもしれないなぁと思い始めた。

 この神社は別名「山王社」と言うと案内板にあるから、江戸時代にはこの山王公園自体が神社の敷地だったのではなかろうか。神社の敷地を使って公園を作ったので、敬意を表して山王公園という名前が付いているのでは・・・。

 更に、この近辺の地名は「山王○丁目」だということと、その北側にある比恵地区が日吉神社の系列である「日枝神社(ひえじんじゃ)」に由来することを併せ考えれば、付近一帯が社領だった可能性もある。藩の信仰が厚い神社は田畑を社領として与えられたから、江戸時代には広い敷地を持つ立派な神社だった可能性は充分ある。

 そういえば、今日の花見の候補の一つでもあった藤崎の「紅葉八幡宮」は、黒田藩三代目藩主黒田光之の信仰厚く、その後黒田藩の守護神として崇められ、広大な敷地と社殿、能舞台、随神門、鐘閣などを有していたが、明治時代になり社領を返上し今のようなこじんまりとした神社になっている。この日吉神社も、何らかの事情で敷地を縮小することになったのではないか。

 そう考えると、この山王公園のど真ん中に日吉神社がある理由がよく分かる。なるほど、それなりに謂れのある公園だったのだ。

 ところで、この公園の東側には「御笠川(みかさがわ)」が流れている。御笠川は、太宰府天満宮の北東に位置する宝満山を源とし、大宰府政庁の南側を横切って福岡市博多区を通り海に注いでいる。以前足を運んだ、「濡れ衣を着せる」の語源となった「濡衣塚(ぬれぎぬづか)」は、この川沿いにある。

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 何でもない川のように見えるが、実はこの川、けっこうな暴れ川で、1999年と2003年に豪雨で川の水があふれ、博多駅東側に甚大な被害を及ぼしている。地元の人に聞くと、1999年のときはJR博多駅からこの山王公園辺りまで水浸しになり、多くの場所で膝上くらいまで冠水し、中には1 m近くの深さがあったようだ。一番ひどい被害を受けたのはビルの地下街と地下鉄の駅だったようで、すごい量の水が一気に流れ込んで、亡くなった人もあると聞いた。

 どうも、この駅東側は土地が低いようで、川があふれると水が溜まってしまう構造らしい。そのうえ御笠川は、上・中流で降った大雨が一気に押し寄せやすいため、短い寺簡易水かさが増し、この下流域で氾濫するらしい。なるほどそうなると、駅東側は不人気地ということになるのだろう。

 この御笠川から更に東に数百メートルいくと、福岡空港にぶつかる。ここはもう空港のすぐそばなのである。福岡空港はJR博多駅から地下鉄で二駅先と、市の中心部からすごく近い空港として有名だが、おそらくこんな場所に空港が作れたのは、文字通りこの辺りが昔何もなかったからなのだろう(笑)。

 福岡空港は以前「板付空港」と呼ばれており、松本清張の「点と線」でも板付空港として登場する。元は終戦間際に作られた陸軍の飛行場なのだが、占領下で米軍が「板付基地」として接収したことから、板付空港の名前が付いた。名前の由来は周辺の地名にあり、山王公園から南東に2kmばかり行った辺りの地名が板付である。

 さて、駅の東側は何もないなんて書いたが、弥生時代にはこの辺りに農耕集落があったことが分かっている。その遺跡があるようなので、ちょっと行ってみることにする。

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 この遺跡は福岡県指定史跡になっていて、案内板によれば正式名称は「比恵環溝住居遺跡」というのだそうだ。一辺10mの溝で四角に区切られた中に二つの竪穴があり、弥生時代の住居だったことが分かっている。こうした構造の環溝住居がいくつも集まり、集落を形成していたようだ。

 なかなか興味深い場所なのだが、如何せん、何気ない細道の片隅にあるうえ、道案内が全くないので、たどり着ける人はそうはいないと思う。おまけに、道路側に生垣があって隠れるように存在しており、脇から入るとようやく案内板が見える。これじゃあ、よくよく下調べして来ないと分からないよ。

 私はたまたま見ていた地図に載っていたのでたどり着けたが、それでもすんなりとは来られず、周辺をウロウロした。せっかくの公開遺跡なのだから、もう少し来やすいように案内板でも出したらどうだろうか。

 さて、桜も遺跡も見たことだし、そろそろ帰路につこう。遺跡のある通りを南西に進み、竹下通りにぶつかると北西に折れる。暫く行くと、百年橋通りに突き当たるので、ここを南西に折れ、JRの高架をくぐる。高架の向こう側に「東領公園」という運動公園がある。

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 この小さな写真では見にくいと思うが、ここは鉄道の高架が三重構造になっている。一番上が新幹線で、ちょうど見えるのがこの前全線開業したばかりの九州新幹線の電車である。その下にJRの在来線が上下二段になって走る。ブルーの車両が見えるが、これは博多と大分を結ぶソニックという電車だと思う。SF映画に出てくるような特徴的な形をしていてよく目立つ。

 上下三層あると頻繁に電車が来るので、電車の好きな人にはなかなかいいスポットだと思う(笑)。

 さて、百年橋通りはこの先「那珂川(なかがわ)」を越えるのだが、そこに架かっているのが、通りの名前の由来となる「百年橋」である。どういう意味なのかと調べてみると、明治元年から数えて百年目に当たる1967年に竣工されたため、こういう名前が付いたようだ。なかなか面白い発想である。

 今日のところは百年橋までは行かず、手前で北側に回る。この辺りは「美野島(みのしま)」という地区だ。比較的新しい名前のようで、古くは「蓑島」という字を当てていたらしい。地下鉄が出来る前にJR筑肥線が博多まで通じていた時代には「筑前簑島駅」という駅が近くにあったようだ。

 この美野島が有名なのは、古くからの商店街があるからで「美野島商店街」という名前で親しまれている。土日は休みで店は閉まっているが、どんな雰囲気のところかちょっと覗いてみようと思って立ち寄った。

 商店街は、百年橋通りから入って200mほどのところにある交差点を起点に東西南北に広がっているようだが、どちらかというと東西方向の方が店が多いらしい。

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 肉屋、魚屋、八百屋など昔ながらの個人商店が並ぶ昭和の匂いのする商店街で、日頃どの程度賑わっているのか知らないが、無人の通りを歩くと、時代をタイムスリップしたような気分になる。こういうのが、古き良き博多の街並みということになるのだろうか。

 美野島商店街を北に抜けると、住吉通りにぶつかる。すぐそばに住吉神社があるので、ちょっと立ち寄る。

 住吉神社は以前にも訪れたことがあるし、縁起などはその時にも書いた。創建年代は不詳で少なくとも1800年の歴史はある、日本で一番古い住吉神社である。住吉神社の総本山は大阪の「住吉大社」だが、最初に出来た福岡の住吉神社はやや別格扱いで「住吉本社」とか「日本第一住吉宮」といった別称を持っている。

 ちなみに総本山である大阪の住吉大社とこの福岡の住吉神社、そして下関の住吉神社を合わせた三社が「日本三大住吉」と言われている。

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 以前来たときには本殿が補修中で、工事現場の中を歩いているような感じだったが、ようやく工事は完成したらしく、覆いも取れてすっきりした。朱塗りの柱と白い壁の対比が美しい。

 境内に古い博多の絵図が掲げられていたが、これを見ると住吉神社は海に突き出た形になっている。航海・海上の守護神として崇められていたからだろう。現在は埋め立てられてしまったが、当時の博多湾はもっと内陸まで入り込んでいたようだ。住吉神社のメインの祭神は、「イザナギ(伊弉諾)」が黄泉の国から帰って来て行った禊の最中に産まれた「住吉三神」だが、三神はいずれも「筒男神(つつのおのかみ)」で、この「つつ」に星という意味があるということだ。星を頼りに航海していた時代の名残だろうか。

 その絵図に、先ほど行ったばかりの美野島の旧名である蓑島の文字が見える。当時は島だったらしい。海に浮かぶ島が何百年後かに商店街になるんだから、歴史というのは面白いものだ。

 さて、ここまで来れば博多駅はすぐそばだ。住吉通りを歩いて博多駅の西側、つまりスタート地点とは逆の博多口に着く。JR博多シティーは今日も繁盛しているようで、たくさんの人が駅周辺を行きかっている。西側と東側で、こんなに雰囲気が違うんだなぁと改めて実感した。

 今日は今まで来たことのないエリアが探検できてなかなか有意義だったし、山王公園以外は静かでのんびりと散歩できたのが良かった。今日もいい散歩だった。

posted by OhBoy at 23:22| 日記