2011年06月05日

スーパークールビズ

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 会議で今週後半はずっと東京にいて、今夜福岡に戻って来た。幸い雨には降られなかったが、今日、山口県を含む九州北部が梅雨入りしたと気象庁より発表があった。北九州だけポツリと取り残されていたから、梅雨に入るのも時間の問題とは覚悟していたが、いざそう宣言されると、気分的に滅入るなぁ。

 東京では水・木と気温が低めで、背広を着ていてもおかしくはなかったのだが、金曜は少々気温が高くて汗をかき、今日はもっと蒸し暑かった。いや、クールビズでも問題はなかったのだが、あるセッションだけ背広が必要だったので着て帰ったのである。

 既にニュースで盛んに宣伝されているが、今年の夏は節電を徹底する観点から、ゴールデンウィーク明けから前倒しでクールビズが進められている。クールビズ自体は既に2005年から環境省が中心になって行っているが、今年は一段と進化を遂げて「スーパークールビズ」というのが流行らしい。どんなものかとネットで見ていると、ポロシャツありアロハあり、パンツはジーンズやハーフパンツもOKらしい。かなりゆるい服装コードだ。

 5月の終わりにユニクロが、スーパークールビズの着こなし方法を提案するための発表会を東京都内で開いた。その模様をニュースで見て、これが通用するかどうかは業界によるだろうなぁと思った。接客業だと相当難しかろう。外部の人に会わない内勤の人なら問題なかろうが、そういう人は既にかなりラフなスタイルで勤務しているのではないか。

 そうは言いつつ、私は背広至上主義者ではなく、ラフな恰好の方が好きだ。汗かきだからというのもあるが、背広にネクタイというスタイルが、明らかに日本の気候に合っていないにもかかわらず長らく強制されて来たことへの反発もある。

 背広にネクタイというスタイルは、欧米のような、夏でも乾燥していてカラッとした気候の下で着る服装だ。ヨーロッパなど、標準装備だと自動車にクーラーがついていないという国も多いらしい。日本とはまるで環境が異なる国なのだ。

 服装というのは、気候風土に合わせてその地域ごとに過ごしやすく選べばいいので、何でもありがたがって西洋の真似をすればいいというものではない。背広にネクタイというスタイルは、日本のような高温多湿の地域で着るべきものではない。にもかかわらず長らくそうしたスタイルが続いたのは、明治時代の西洋に追いつけ追い越せの気風がそのまますたれずに今日まで続いて来たからだろう。如何にも日本らしい舶来趣味の残滓なのだ。

 日本人の多くは気付いていないが、日本という国は、欧米の人から見ればれっきとした不健康地の一つである。それゆえ、健康管理のための特別休暇を日本駐在員に与えている国もあると聞く。そんな不快指数の高い国の、しかも最も不快な夏のさなかに、背広にネクタイという恰好を意地で通すなんて、愚の骨頂じゃないかと私は思っている(笑)。まぁ西洋コンプレックスゆえに我慢して着て来たんだろうが、思えば何とも哀れで悲しい話だ。

 同じように高温多湿の東南アジアの国では、背広以外に正式な民族服というのを定めている。フィリピンでは「バロン・タガログ」という刺繍入りの白いシャツがあり、インドネシアでは「バティック」というろうけつ染めの布で作られたシャツがある。どちらも、上着なしでそのシャツさえ着ていれば、正式な場にも出られるというルールだと聞く。お蔭で日本から行った駐在員諸氏は、必ずその種の服を買い揃えているらしい。その地の気候に合っていて快適だからだ。

 日本には残念ながら、そういった民族の知恵ともいうべき正装がない。本来はゆかたがそれに当たるのだろうが、明治になってそんな日本文化を捨てて、無理に西洋の服装で通した。元々気候風土が異なる場所で着られている服だから、日本の夏にはまるで合わない。お蔭で夏場には汗だくになりながら意地で着通した。まるで我慢大会だ。クールビズのない時代には、みんなよく我慢していたと思う。

 私の記憶では、クールビズを環境省が提唱した時には、ネクタイ業界がこぞって反対した。夏の間ネクタイなしでいいとなれば、ネクタイの売上げが激減して困るという理由だった。私はけっこうその主張に怒りを覚えたものだ。自分の商売のために、世の中のサラリーマンがどれだけ不快な夏を過ごすことになるのか、知っての上での行動だからだ。それ以来、ネクタイもネクタイ業界も嫌いになった(笑)。

 かつては、夏にサラリーマンが背広にネクタイで過ごさなければならないから、電車内や飲食店、オフィスなどは冷房を強くしなければならなかったのであり、女性は冷え性対策で困っていたわけだ。言うなれば、西洋の真似をするために国民みんなが犠牲になって我慢していた。そんなことをずっと長い間やって来て、いったい何のご利益があったというのか。外回りしている人は汗だくになって背広をひと夏でダメにし、夏バテで健康に支障まで出ていた。そんな現状を知っての上でのネクタイ業界の姿勢には、ホントに腹が立ったよ。

 さて、そうはいっても長らくサラリーマンをやっていると、スーパークールビズのように急激にラフな方向に行くのにも抵抗がある。上に書いたように、東南アジアの国でも「暑けりゃラフな恰好でいい」とは言っていない。その国の気候にあった国民向けの簡易な正装を定めているわけだ。アロハやハーフパンツでもOKというのとは、質が違う対応だ。

 スーパークールビズもいいけれど、日本らしいセンスの、気候に合った正装をこの際定めればいいんじゃないのか。何と言っても先進国なんだから、ドンドン服装のコードが乱れるばかりじゃあ、体面が保てなくなるんじゃないかと心配だ。日本からフィリピンやインドネシアに赴任した駐在員諸氏がバロン・タガログやバティックのシャツを買い求めるように、日本に来た外国の駐在員の方々が、如何にも日本らしいじゃないかと一着買ってみたくなるような夏の正装を作るのが、本来の正しい在り方のように思える。

 沖縄には「かりゆし」という半袖開襟シャツがあるが、あれだって昭和の時代に沖縄の人が考案し県をあげて育てた正装だ。本土だって頑張れば出来るんじゃなかろうか。


posted by OhBoy at 23:29| 日記